前田恵理子: 第一線の放射線科医で患者である私の当事者研究

東大病院の放射線科医として循環器画像診断や医療被ばくを専門としています。患者と中高時代以来の超重症喘息と闘いながら受験やキャリア形成、結婚・妊娠・出産を乗り越えてきました。2015年以降肺癌(腺癌→小細胞癌への形質転換)を6回の再発、4回の手術(胸腔鏡3回、開頭1回)、3回の化学療法、2回の放射線治療、肺のラジオ波焼灼、分子標的薬治療により克服しました。脳転移と放射線壊死による半盲、失読、失語も日々の工夫で乗り越えています。医師・当事者としての正確な発信が医学の進歩に帰することを願っています。

Part 2が出版されました。

 Passion受難を情熱に変えて part 2(医学と看護社)が出版されました。
 Amazonでも即日配送始まっています。 

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 大部分がかつてこのブログに掲載していた内容ですが、書籍化にあたり加筆、修正したので、整合性を保つためにブログに載せていた原稿は2019年10月末で非掲載としました。これまで読んでくださった皆様、”ピアレビュー”して誤植や誤りを発見してくださった皆様、本当にありがとうございました。

 書籍は、Part 1で2015年2月に肺癌の手術を受けた数日後から始まっています。迷いの末に受け入れた、シスプラチン+ナベルミンの化学療法。それから2年半後には容赦なく胸膜播種再発し、分子標的薬を開始。1年半、分子標的薬を飲んだところで、腺癌が小細胞癌に形質転換し、播種結節の一つが急速増大し、大きなリンパ節転移1箇所が出現します。小細胞癌は、生存期間の中央値が8ヶ月という厳しい癌ですから、これは絶体絶命か、と大きな不安にさいなまされる中、パズルを解き明かすように、根治の道を探るのです。厳しい現実に直面したときの考え方と行動の仕方、家族へのがんの伝え方、小学生の子供のがんのとらえ方など、注目して頂きたい点がたくさんあります。
 一方で、この本は30代~40代前半にかけて、小児の医療被曝でいくつも大きな仕事をしてきた、いち放射線科医の記録でもあります。最先端の医療の恩恵を受けながら、最先端の医療を作る生活。きっと、医療関係者ではない方も、医療の進歩を立体的に実感していただけるのではないかな、と思っています。

 素敵な表紙の写真を撮ってくださったのは、写真家の加藤久豊さんです。横浜で行われた2019年の日本医学放射線学会中に、みなとみらいで撮影していただきました。加藤さんは放射線業界では言わずとしれた有名人で、富士フィルムメディカルの代表取締役、日本医用画像工業会(JIRA)会長などを歴任されてきました。科学的な原理や現象を丁寧に調べ、考えて技術を選び、非常に情緒的な写真に仕上げる撮影技術は素晴らしく、星景写真、風景写真、生物写真など、いつも心が洗われるような気持ちで作品を拝見しています。

 Part 1に引き続き、Part 2も、私は印税をもらわない代わりに本の値段を抑えてもらっています。
 また、病床にあるとき、心が弱ったときでも、寝っ転がって読みやすい、ペーパーバックの軽い装丁に仕上げてもらいました。
 ぜひ、よろしくお願いいたします!!