患者から見た診療放射線技師
縁あって、東京電子専門学校の非常勤講師として、診療放射線技師の卵ちゃんたとである2年生に対して、画像診断学の授業をしています。東大の大学生・大学院生も若いですが、専門学校の2年生はもっと若い。ピチピチの駒場生と同じ歳ですからね!40過ぎたおばちゃんには嬉しくなってしまう若さです。
概論では、「病気と共にあった私の人生から見る 画像診断学」というテーマで講義を行います。
概論では、「病気と共にあった私の人生から見る 画像診断学」というテーマで講義を行います。
喘息の経歴から造影剤の安全性につなげたり、私の肺癌の経過の画像をたくさん出して、がん医療における放射線検査の役割を考察したり、脳の一部を失った私のものの見え方から、神経画像の基本を学んだり。最後には心構え的なお話をします。その中で、「患者から見た放射線技師」というの話をしたところ、聞いてくださった学科の先生方から大きな反響をいただいたので、備忘録かねてここにシェアしたいと思います。
患者にとっては、画像検査というのは、いわば「人生を決める検査」。検査を受けに来るときは、次の数ヶ月間が社会生活もそこそこに治療に追われる数ヶ月になるのか(ときには経過が思わしくなくそのまま進行することだってある)、それとも今まで通りの生活を送ることができるのか、ドキドキしながら、「次の数ヶ月間を無事に過ごす切符」を手に入れに検査室に来ているのです。これは、腫瘍の患者さんに限らないと思います。
そんな、人生の一大事の検査結果を、【一番始めに目にする人】なのが技師さん達なのです。結果をすぐに知ることができない患者から見れば、ある意味うらやましい立場です。当然、患者さんは結果が気になりますし、画像の処理と読影は時間を要するため、次の外来まで結果はわからないと頭では理解していても、のどから手が出るほど「速報」が欲しいのです。
中には実際に「どうでしたか?」と聞く方もいまが(当然技師さん達はなにも言えないんですけどね)、多くの患者さんは黙って帰って行きます。でも口には出さなくても、技師さんや検査室に出入りするスタッフの表情に何かヒントがないか、目を皿のようにしている患者さんは、実はとても多いのです。
「検査を終えて部屋に入ってきている技師さんが、再発があったような顔をしていないか?」って。だから、皆さんの表情はすごく見られているですよ、という話をしました。
操作室から出てきた技師さんが、晴れ晴れはつらつとしていたら、「きっと結果が良かったんだ」と不安が晴れます。たとえ本当は再発があるなど悪い結果であったとしても、次の外来まで明るい気持ちで過ごすことができます。
ところが、技師さんが自信がなく歯切れが悪そうな様子だったり、覇気がない様子だったりすると、「これは結果が悪かったのではないか」と、あらぬところで患者さんの気持ちは落ち込んでしまいます。こうなっては、検査全体の信頼性もひくいのではないかと、実際の検査や読影の信頼性とは全く関係のないところで不信感をもたれる原因となってしまいます。すると、いざ結果が出たとき、それを受け入れて治療にすんなり進むこともむずかしくなりかねません。
このように、患者というのは、医療者が思っても見ない小さなサインから、自分の本当の状態がどうなのか、読み取ろうとします。
こんなのが画像診断学概論として適切かはよくわかりませんが、患者の立場からは、結構「ツボ」だったりするので共有してみました。